気が沈み、無気力な人に『未来のミライ』が効く
細田守作品が好きだ。
時をかける少女、サマーウォーズ、おおかみこどもと雨と雪、バケモノの子...どれも複数回観たくなる。
あなたはどの作品が一番好きだろうか?
個人的にはおおかみこどもと雨と雪。
生物的なアイデンティティと社会的なアイデンティティのせめぎ合いが自分のことではないのに妙にリアルに感じられるので一番のお気に入りである。
そんな僕が未来のミライは見ないままになっていた。
もともと頻繁に映画館に足を運ぶ方でもないので、先に鑑賞者の評判を聞いてしまって見る気がどこかへ行ってしまっていた。
これまでの作品に比べるとえらい酷評だった。
公開から半年と少し経った一昨日、契約中のストリーミングサービスのラインナップに『未来のミライ』を見つけた。
ここで見なければ永遠に見ないと直感した僕は、再生ボタンを押したのだった。
実際に見ると、確かにこれまでの作品に比べて退屈さを感じる時間が多かった。
その原因の一つに、登場人物と描かれる場所が極端に少ないことが挙げられるように思う。登場人物は主人公くんちゃんとその家族+α、現実の場所もほとんどは家だ。
さらに主人公のくんちゃんである。
これという特徴のない子どもの上に、とにかくやかましい。
そして細田作品に必ず含まれる「不思議なこと」が今回は庭の木だが、その絡め方もこれまでの作品に比べて衝撃感が少なくは感じた。
ともあれたくさんのメッセージも読み取れる。
それらのメッセージを考えると、主人公は普通のやかましい駄々っ子のくんちゃん出ないといけないし、登場人物はくんちゃんの家族が基本でないとダメなのである。
未来のミライ視聴。
— よこがお (@maiko_a_o) 2019年3月26日
確定しない未来に対して、現在の行動がどんな結果に結びつくかはパラメーターが多すぎて予測できない。
「ほんの些細なことがいくつも積み重なって今の私たちを形作ってるんだ」
ほんの些細な事でもやらなければ次の未来、明日の今はない。#未来のミライ
いきなりクライマックスのセリフに対しての感想だが、個人的にはこのセリフが最大のメッセージであるように感じた。
自分の未来を大きく考えた時に、ときにはお先真っ暗な気がして項垂れる時もあるが、そんな暇があったら何かした方が100倍良い。
ほんの些細なことがいくつも積み重なって今(未来)の自分を形作るのだから。
文字で見るとあったりまえのことでも、気が病んでいる時はこういう当たり前の言葉が一番心に染みる。逆にいうと気が病んで引きこもっている時というのは当たり前のことを忘れてしまっている時でもある。
あとはだらっとした感想である。
視聴中感じたこととしては、やっぱり時間の厚みが入るとググッと引き込まれるということ。
— よこがお (@maiko_a_o) 2019年3月26日
このお話は極端で、「現実」の舞台は主人公のくんちゃんの暮らす家がほぼ9割と言える。
場所は不思議な力で次々に変わるのでなんだか離散的。
時間の巧みさがストーリーを作っている。
この時間の厚みはもうひとつ、視聴者をハッとさせる。
— よこがお (@maiko_a_o) 2019年3月26日
生まれた頃から今の時間軸で触れ合ってきた家族の時間である。
長く一緒にいると全て分かったような気になって、なんとなく昔の話は気恥ずかしい。
ただ、今に至るまでの生き方全てが子どもにとって一番の学びに繋がる。
いいお父さん、いいお母さんはゲーム的なパラメータマックスの人間というわけではない。
— よこがお (@maiko_a_o) 2019年3月26日
なぜか頭にある「完璧なもの」を目指すと目の前のことに盲目になる。
人間として、社会を形成して生きる術を間違えながらも身につけてきた、それを伝えられる親になりたい。
総合して、やっぱり見てよかった。