あの人のために書く
文章を書こうと思うとき、大抵は誰かの顔が思い浮かんでいる。
あの人の話面白かったな。
あの人がこの話聞いたら面白いって思ってくれないかな。
僕は自分のことを臆病だと思う。
人付き合いもその臆病がいつも邪魔をしてきた。
初めての人と仲良くなれないだけじゃない、仲良くなった人との関係に臆病が厄介な罠を仕掛ける。
自分の持っているものを失うのは、なにかを得られないより苦しいものだ。
後悔は何かを得られなかったから辛いんじゃなく、何かを得る機会を失ったことに気づくから辛いのだ。
僕は大切な友人を作って失うのが怖かった。
そんな僕でも、これまでの人生で自分のペースで生きていても定期的に連絡をくれる人たちがいる。かけがえのないものだと思う。そんな友人たちに、そしてこれから友人になってくれる人たちに何か自分がお返しできるものはなんだろうと思う。
それは特別じゃなくていいのかもしれない。
食事をした日、プレゼントをもらった日、その日のありがとうの後にまたありがとうを言う。あなたの心遣いが本当にこんな風に嬉しかったよと伝える。自分がされたら嬉しいことだと思う。
僕はたくさん考えてしまう。
辛いことや苦しいこともたくさん考えてなんとか打開してきた。
お礼を工夫するのは気恥ずかしいながらやってみたいけれど、すぐにできることじゃない。
だから自分の思うちょっと価値あることを少しずつ考えられたらいいなと思う。
その一つをこの文章たちに込めて。
たくさんの人の顔を思い浮かべながら。